149 教頭先生へ ただ「早く帰ろう」とだけ言いたくない

教頭の役割

最近、先生たちの勤務時間が減少傾向にあると感じてます。実際、「教員勤務実態調査」からもその傾向が見て取れます。

良いことなのですが、でもなんか、引っかかる部分もあります。

こんにちは。BigWaveといいます。公立中学校の現役教頭です。奇妙な生態を持つ教師「教頭」。そんな「教頭先生」の頭の中を公開します!

見えにくい「持ち帰り業務」

内田良先生をはじめ多くの方が教師の労働環境について問題提起し続けてくれたことで、メディアでも「学校の先生の働き方」がクローズアップされ、業務量の多さや時間外労働の問題が叫ばれるようになりました。

文科省からも緊急提言が出されるなど、文科省や教育委員会が率先して「働き方改革」を掲げてくれるようになったおかげもあって、先生方の帰る時間が早くなってきました。少しずつですが、改革が進んでいるなと実感しています。

その中で、教員の労働時間を測る重要な指標となっているのが「時間外在校等時間」です。


時間外在校等時間とは

一般企業などで使われる「時間外勤務時間」は、時間外に命令や承諾による「命じられた勤務」を行った時間のことです。

一方学校では、命じることで時間外に勤務させる事ができる内容は限られていることから、「時間外勤務」の枠組みでは先生方の勤務実態を計ることはできません。そこで使われているのが「時間外在校等時間」です。

公立学校の教員における「時間外在校等時間」は、正規の勤務時間外で、学校内や校外での業務中に滞在・活動していた全ての時間を指します。

大きな特徴は、「学校から指示されて行った業務(命じられた業務)」だけでなく、「教員が自主的・自発的に行っている準備や研修等の活動」もすべて一括してカウントされる点にあります。

具体的には、授業・学習指導、学級経営・生徒指導、校務分掌・運営、行事、自己研鑽等です。校内にいる時間であれば「業務命令」か「自主的活動」かを問わずカウントされる仕組みになっています。そのため、在校時間としてのデータは一定の精度で把握できるようになりました。

もちろん学校外であっても、研修や部活動の引率なども業務として扱われ、時間外在校等時間に含まれます。

しかし、この時間外在校等時間には致命的な盲点が存在します。それは、「持ち帰り業務」が完全に抜け落ちているという点です。


目に見えない労働環境

職員室で「早く帰ろう」と言えば言うほど、プレッシャーが強まります。でも退勤時刻が早くなったからと言って、やるべき仕事が消えて無くなるわけではありません

「間に合わない。でもこれ以上学校に残れないな」と感じた時点で、「家でやろう」となります。

明日までに作らなければならない教材、週末までに処理しなければならない成績データ、遅れている学級通信の執筆。

実際私も昔は、「晩ご飯を食べてから教材を作成し、その後に学級通信を作るという」というルーティーンを持っていました。

在校等時間では、生徒がいる時間帯は生徒優先先生方がいる時間帯は打合せや会議や研修優先電話対応の時間帯は保護者を優先することになります。

教材や通信の作成はそれらの業務・対応が一段落してから、つまり時間外にすることになります。これは昔も今も変わっていません

勤務時間外になっても学校に残って仕事をすれば、時間外在校等時間にカウントされます。でも退勤した後の労働は、公式な「時間外在校等時間」のデータには1分もカウントされません

文科省や教育委員会も「時間外在校等時間」を指標に使っているため、「教員の残業時間は減少している」となってしまいます。

「時間外在校等時間」には「持ち帰り業務」は含まれない。これが、残業の「見えない化」を引き起こしています。


なぜ、持ち帰り業務が発生してしまうのか

理由は簡単。もともとの業務量が圧倒的な量だったため、たとえ業務が削減・効率化が進んだとしても、まだまだ勤務時間内に収まる業務量にはなっていないからです。

業務量が十分削減・効率化されていないのに、「在校等時間を減らせ(A)」という指示に対して、単に「早く帰る(B)」という直接的思考だけで対応しようとすると、「持ち帰り業務の増加」となります。

加えて「100%」や「最善」になることで達成感を感じるのなら、自分のプライベートな時間(睡眠時間や家族との時間)を削ってでも取り組むという、自己犠牲のループに陥ってしまいます。教師ってそんなタイプの方が多いと思います。

学校では個人的な業務以外の優先すべき業務にあふれています。突発的な対応も多いです。そのため、「静かな自宅の方が集中してできる」という思考に拍車がかかります。

蛇足ですが、教頭先生の時間外勤務等時間が先生よりも長いのは、施設管理を担っていることに加え、「教頭の業務は持って帰れないから」と言えるかもしれません。


「早く帰ろう」に先行して

時間外在校等時間の目標を平均月30時間と掲げることはとてもいいことだと思います。ただ、現場として、目標と現状の距離が遠すぎてまだ全く現実味がありません。

そんな状況で「早く帰ろう」と声をかけるだけでは逆効果だなと思っています。

並行して、と言うより先行して、業務改善を進めて行く必要があります。業務の総量を大幅に減らして、かつ効率化していかないと、月平均30時間なんて、夢のまた夢です。

併せて、先にも述べましたが、先生方はまだまだ「学校でできないのなら家でする」というマインドセットを持っています。ここから変えていく必要があります。

業務の総量は膨大なのですが、学校全体として少しずつでも改善に取り組み、その取組みと効果・進捗状況等を教職員全員と共有することが大事です。一部のメンバーではなく、全員に敢えて伝えていくのです。

職員室で業務改善が進んでいるという情報共有や実感があって、「家に持ち帰らない」と言うマインドセットが育っていけば、時間の使い方にも気を配ろうと言う発想や余裕が出てきます。「時間外在校等時間」も本領を発揮できます。

理想は「言われたから早く帰る」のではなく、「今日はちょっと早く帰ろう」と主体的に判断できる環境です。そんな職員室をめざしています。

次回は、これまで具体的にやってみて再現性もありそうな取組みをまとめてみます。

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