110.教頭先生へ 教頭のジレンマ 後編

教頭

前編に引き続き、学校にある解決不可能に見える課題について見ていきます。

こんにちは。BigWaveといいます。公立中学校の現役教頭です。奇妙な生態を持つ教師「教頭」。BigWaveのアジトはそんな「教頭先生」の頭の中を公開する教頭ブログです。

→トップダウンからの脱却

4.スパン・オブ・コントロール
これは最近知ったことなのですが、一人の上司が直接管理できる部下の適正人数は5~8名なんだそうです。これをスパン・オブ・コントロールと言います。

生徒数400名ほどの中規模校で教職員の数は40名ほどになります。サポーターや支援員さんも含めるとさらに増えます。

しかし学校にいる管理職は校長と教頭だけです。教頭は校長の部下なので、2人で手分けして教職員を管理するわけではなく、それぞれがが各々の立場から全ての教職員を管理することになります。

つまり、1人で40名を管理し、指導育成し、評価することになります。適正人数の5倍です。大規模校ならさらに多くの教職員を管理職は見ることになります。

果たして適切な管理・指導育成・評価はできるのでしょうか?

試しに今年度、校長を助けながら校務を整理しつつ、必要に応じ児童生徒の教育をつかさどりながら、マネジメントをし、並行してその他の業務をこなしつつ、36名の先生方の授業を見学してその後に授業見学させてもらった先生と振り返りを行ってみました。

全員終わるのに、4カ月かかりました。そして今は、振り返り後の授業改善を見取るために2回目に取り掛かっています。

ものすごく時間がかかります。同じ学校に居られるのは3年しかないのに。

スパン・オブ・コントロールが言う「適切な管理」から見ると、学校のこの状況はどう評価されるのでしょうか?

5.最大の課題
学校現場に根付くいくつかの課題を見てきましたが、これって改善できるのでしょうか?

結論から言うと、改善できるのではと私は考えています。

ご存じの通り、学校は文科省をトップとした巨大組織の末端組織です。誰がどう見てもヒエラルキー組織です。ヒエラルキー組織の指示系統はトップダウンです。

でももしみなさんが勤務する学校の先生方が、「学校も校長をトップとしたヒエラルキー組織(トップダウン)だ」と思い込んでいるのなら、ここまで見てきた課題は解決できません。

法律上、校長には多くの権限が与えられています。しかしこれまで見てきた通り、現在学校で行われている全ての業務について、専門性を持って精通し判断を下すことができる人など誰もいません。(いたらごめんなさい)

これが学校内で改善がなかなか進まない大きな理由の一つになっています。

だとすれば、持続可能な学校が成り立つ組織構造はヒエラルキーではありません。まさにその逆で、専門性が高い人を中心に小さなチームを組んで、担当する業務を自主的・主体的に推進していける組織なら、ここで挙げた全ての課題を乗り越えられると考えています。

その組織は言わば全員平社員状態です。役職ではなく役割で業務を遂行していきます。

具体的には、学年や校務分掌を主体に、1つの業務に2人以上で担当を担います。学校には多種多様な業務があるので、一人の先生が複数のチームに所属することになります。

チームには最大限の権限を委譲します。ほとんどの学校では企画会議等で検討決定の後、職員会議で共有となると思うのですが、この決裁の流れも見直します。(詳しくは10)

今の法律では全ての決定権は校長先生にあるので、チームリーダーが校長先生に相談する形をとれば決裁もスムーズです。そんなチームが幾重にも重なりあって、全ての学校業務をカバーしていきます。そんな組織をティール組織と言います。

ティール組織に移行した結果、教職員の自主性・主体性が上がり、時代の変化に敏感に対応できるようになります。チーム内でのOJTも細かく随時行われ人材育成も進みます。自己決定感や自己有用感などの個人的な成長も期待でき、組織力の底上げにつながります。

ここ最近、文科省主導で授業時間や授業時数などの設定を学校裁量にしようとする検討が進められています。裁量権を与えるということは自由度が増すとともに考えることも増えていきます。

委ねられたけど、取り扱いに困る状況にならないためにも、それぞれの担当が培ってきた専門性を発揮して最適解を考え、最後に校長先生が決定するのが理想です。

ここまで今学校にある解決不可能に見える課題と解決法について見てきました。まとめれば、ヒエラルキー組織からティール組織に移行することで、これらの課題を解決できるということです。

ものすごくハードルが高そうに聞こえますが、私はそうは思っていません。と言うのも、今の学校組織はもうすでにティール組織化しているからです。

法律上や一般的には、学校もヒエラルキー組織でトップダウンで業務が行われていると思い込まれています。でも現場で思うのは、そんなの机上の空論で、校長先生に全ての判断・決定を委ねているような学校は無いと思っています。

個々の立場で先生たちが自主的・主体的に動いて判断しているから、今の学校は何とか回っています。みなさんが勤務する学校では、日常業務の中で校長先生が判断・決定していることは何割くらいあるでしょうか?

学校組織のティール組織化が私の今の大きなテーマの一つです。一番難しいと感じているのは、それを実行する管理職を含む先生方の意識改革です。納得が無ければ主体的な行動も出てきません。

目標は「持続可能な職員室」。今年度もあと3か月半。楽しく挑戦していきます。

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