109.教頭先生へ 教頭のジレンマ 前編

教頭

ここ最近、国や自治体が教育現場の改善に前向きになってきました。おかげで文科省や教育委員会が次々に改善策を打ち出しています。

そんな職場環境の改善ですが、みなさんは享受できていますか?

改善が進むのはうれしいことなのですが、まだまだ課題は山積みです。今後、学校管理職がマネジメントを進めるにあたって、解決が必要な課題もまだまだあります。

こんにちは。BigWaveといいます。公立中学校の現役教頭です。奇妙な生態を持つ教師「教頭」。BigWaveのアジトはそんな「教頭先生」の頭の中を公開する教頭ブログです。

→解決できない課題

学校現場には改善が進まない多くの課題が蓄積しています。教師のなり手不足による持続不可能な職員室が現実味を帯びてきたことで、最近になって、本当にゆっくりとですが、労働環境の改善に国が動き出してくれています。どうか間に合いますように。

本当にありがたいと感じる一方で、今改善策を講じられている課題以外にも学校現場が構造的に抱えている問題があります。

これらの問題は、例え改善が功を奏して教職員に時間的余裕ができたとしても、マネジメントがなかなか進まない原因となります。

1.新しい業務の増加への対応
2.管理職の時間制限
3.教職員の激しい入れ替わり
4.スパン・オブ・コントロール
5.最大の課題

1.新しい業務の増加への対応
新しい業務が増加するにつれて、知らない分野のことも増えてきます。

生徒指導提要の改訂で、発達指示的生徒指導という概念が学校現場で普及してきました。現在ではかなり職員室にも浸透して、実際の生徒対応にも根付き始めています。しかし現在管理職となっている年代は、発達指示的生徒指導の実務経験がほとんどありません

そんな実務経験が無い業務について、管理職が指導し評価するには、管理職も主体的に学びを進めていくしかありません。

生徒指導や学習指導などにすでにある分野内での新しい概念や業務であれば、まだ何とか大人の学びを進められそうです。管理職も日々精進と言ったところです。

と安心したいところですが、ICT関連の業務については困難度が増します。日頃からPCやネット関係に関心がある方はまだ何とかなりますが、これまで「デジタル」を避けてきたタイプの管理職にとっては、まさにムリゲーです。

全く理解できない内容について、どうやって指導・評価を行えばいいのでしょうか?

さらに目に見えるアプリの活用やデータ管理できるAIドリルの活用の他に、職員室では端末管理やアカウント管理ライセンス管理も行わなくてはいけません。これらの業務は、陽の目を見ることは少なく、管理職による指導や評価がさらに難しくなります。

極めつけはICT利活用と管理運用全般の育成です。正直、お手上げです。

教科指導のような教師に専門性がある分野なら、自己研鑽して自分の専門性を向上させていきます。ところが、ICTの利活用や特に管理運用については、教職員は全員素人です。専門性を持つ人は職員室に一人もいません。

文科省や教育委員会から出てくるICT活用指導力向上などには、めざす教師像は明言されていますが、どのようにしてスキルを向上させていくのかといった方法や時間の確保はありません。根本的なところは学校まかせになっています。

一輪車を持ってきて、乗り方の説明書を手渡した後、「では上手く乗りこなしてください。生徒にも上手く乗れるように乗り方を教えてください。失敗したら責任は取ってください。」と言っているように聞こえます。

2.時間制限
学校経営方針や教育目標は校長先生が決めて、年度初めに先生方に伝えます。その方針に沿って目標実現のために、全教職員が足並みをそろえて取り組むのが理想です。

私の経験則ですが、何かしらの方針転換の後、それが職場に定着するには最低でも2年、方針に沿ってメンバーが主体的に動き始めるにはさらにもう1年が必要です。

ところが、校長先生は平均して3年で異動します。その補佐として期待される教頭も平均して3年で異動します。3年毎の異動のたびに経営方針が変わるのなら、正直、混乱しかありません

平均3年で異動する校長が経営方針(時には教育目標も)を決めるのは、その構造自体に無理があります。教職員にとってみれば、方針が変わるごとにやり方を変えるか無視して自分がやりたいようにするかの二択になってしまいます。

現行の制度で行くなら、管理職はたった3年で、教職員集団に経営方針を定着させ、権限移譲を図りながら持続可能な集団に成長させる必要があります。

3.激しい入れ替わり
3年毎に入れ替わる管理職と共に、先生方も定期的に異動されます。講師の先生はもちろん、年限に達した教諭の先生方も異動されます。

特に最近、私が勤務している地域だけなのかもしれませんが、全体の4分の1ほどのメンバーが毎年入れ替わっていきます。4年経てば教職員が総入れ替えするペースです。みなさんの自治体ではどうでしょうか。

管理職の時間制限に加え、育成してきたメンバーも次々に出ていきます。そして違う価値観のメンバーが入ってきます。そんな職員室で一貫性がある取り組みを継続していこうと思えば、教職員が持続的に学びあえる余裕と時間が不可欠です。

しかし残念ながら学校では、子どもが学ぶ時間は目一杯確保されていますが、大人が学ぶ時間は限られています。

そんな環境が何十年も続いたからなのか、研修や勉強会などで自分たちが学ぶことに積極的ではない人が一定数います。勉強会をしても人が集まらなかったり、研修を開いても研修を休むために年休を取る人がいると危機感を覚えます。

人材育成の具体的な場の提供も大事ですが、まずは何よりその目的の共有と理解推進を図って、教師も学び続ける存在だという意識の醸成が不可欠です。

さて、かなり長くなってきたので、残りの4と5については次回の「後編」で見ていきたいと思います。

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