66.「教師は世の中のことを分かっていない」の思い込み

思い込み

「教師は世の中のことを分かっていない」といった発言を聞きます。教師同士の会話でも聞くことがあります。

実際私もそう思っていますが、本当にそうなのでしょうか?

みなさんはこのイメージについてどう思いますか?

こんにちは。BigWaveといいます。公立中学校の現役教頭です。奇妙な生態を持つ教師「教頭」。そんな「教頭先生」の頭の中を公開します!

  • 見えているのは「世の中」の一部分。

学校と言う職場はかなり閉鎖的です。外に出ると言えば、職場体験や福祉体験の体験先へのあいさつが思い浮かびます。

また最近は探求学習に取組まれている学校などで、地域の企業や役所とコラボする目的で、外に出る機会が増えてきています。

でもそれくらいです。

営業ノルマなんてありませんし、資材の高騰で悩むこともありません。資金繰りを気にすることもありません。どれを経費で落とそうかと考えることももちろんありません。

それらのことを日々考えている職場で働いている方からすると、職員室はぬるい職場に映るかもしれません。「教師は世の中のことが分かっていない」と感じる場面もあると思います。

学校現場は世の中の動きに対しても鈍感です。

これまではこれからの教育について、課題意識を持って考える機会も時間もほとんどありませんでした。(最近は、大きく動き出しています。)

学校には人事権もそれに伴う予算もないので、新しいことを始めたとしても専門性の高い外部人材を入れることができません

外注もできません。よく分かっていないことを自分たちで試行錯誤しながらなんとかやっていくしかありません。

救いの手は学校の外にあります。校外での学びを現場に持ち込むのが理想ですが、学校の外に学びに行く人は少数派ですし、そもそも新しいことを導入することも苦手です。

そんな状況を見てか、「教師は世の中のことが分かっていない」と思われても仕方ありません。これは謙虚に受け止めるべき指摘だと思います。

でも「世の中」って何でしょうか

「世の中」にはいろいろな立ち位置があります。自分が見ている「世の中」と、人が見ている「世の中」は違います。

経営、営業、経理、人事、開発等それぞれを担っている人は、その分野から見える「世の中」は分かっていても、職種が違う人の「世の中」はまた別物です。

子どもたちにとっては、学校生活も立派な「世の中」です。

この6年間+3年間で子どもたちは、学力はもちろん、人権感覚を養い、道徳観を養い、規則を守ることの意味を知り仲間の作り方を経験します。社会人としての基礎の基礎を、小中9年間で身に付けます。

この義務教育期間に子どもたちは爆発的に成長します。

みんなで何かを成し遂げる喜びを知り、悲しんでいる仲間に寄り添う経験をします。ケンカの仕方と和解の仕方を学ぶ子もいます。

子どもたちは学校でいろいろな経験をすることで、さらに大きな世の中に出るための準備をしています。その準備を一緒に進めていくのが「教師」です。

公立学校は「世の中」の縮図です。公立学校ほど多様性のある場所はなかなか無いと思います。経済的にも文化的にもいろいろなバックグラウンドの子どもたちが集まって集団生活をしています。

そんな多様性の中でどのようにして人間関係を気づいていくのかを学ぶのは、公立学校だからこそできる活動です。

進路はもちろんですが、それ以外にも教師が生徒の人生を左右する出来事に関与することもあります。そういった部分は外からは見えませんが、それらも間違いなく世の中の一部です。

学校現場から見えない「世の中」もあれば、学校現場の外から見えない「世の中」もあります。本当に「世の中」のことを知っている人は誰もいません。

ほぼ全ての人がのぞき見したことがある職場が学校現場です。子ども時代に目の前に必ず教師がいました。だから、「教師は~」と言い易いのかもしれません。

冷静に考えると、学校現場が一般的な「世の中」とは違う世界なので、「世の中」のしわ寄せを引き受けられているとも言えます。

学校現場が「世の中」と同じになれば、そのしわ寄せは国や自治体、家庭が引き受けることになります。

そう考えると、学校現場が世の中のことを知らないから、世の中が回っているとも言えるのではないでしょうか?

「教師は世の中のことが分かっていない。」という意見には真摯に向き合い、自分たちに足りないものに目を向けることは大事です。それが自分自身の成長に繋がります。

そしてその視野の広さから、5年後、10年後に子どもたちに必要な力はどんな力なのか?それを探すことが教師の専門性の一つであり、子どもたちの「世の中」を広げ深める材料になります。

教師は子どもたちの「世の中」を支える、とても素敵な職業だと思っています。

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