10年前の報告ですが、教頭先生268人を対象に行った検査で30%(81人)がうつ病と評価されたそうです。
役割の曖昧さや管理者からの支援不足などが大きな原因なんだそうですが、それ以外にも「しんどいな」と思うことはたくさんあります。
仕事に飲み込まれそうになる中で、どうやって病まずに、モチベーションを維持していけばいいのでしょうか。

→攻撃は最大の防御
以前近畿教頭会で、多忙な方の発表をお聞きしました。朝の開錠業務も夜の施錠業務も教頭が行っているそうで、多忙感しかない毎日を過ごされていました。
学校の開錠・施錠は整備員さんがしてくれる学校もあるので、自治体の財政面も教頭の業務増加に大きく影響しています。
例えば、築50年の学校と最近建て替えた学校とでは、修理対応の量が全く違います。修理依頼を出してすぐに対応してもらえればまだいいのですが、財政上、「すぐにはできない」や「今年度はできない」、そもそも回答もないといったことが起こります。
こうなると、教頭は修理してほしい先生方と修理しない教育委員会の板挟みになってしまいます。中でも照明設備や体育館の床なんかは授業活動にも大きく影響します。個人的に私はこういった状況が結構つらいです。
ICT化に伴う業務などこれまでは無かった業務も生まれました。最近は教職員の若返りに伴う組織的な人材育成やメンタルケアなども求められています。
この5年間で教頭職は業務の幅がグッと広がったと感じます。
教諭時代や教育委員会時代に自分が担当していた分野は専門性も高く自信を持って対応できると思います。
でも教諭時代に教務主任をされていた方にとって、アレルギー対応と給食業務は専門外です。教育委員会で人事を担当されていた方にとっては施設の安全管理は専門外です。
教頭になると分からないことが大半を占める中、なんとか業務を進めていきます。そしてもし、追い打ちをかけるように校長先生が教頭を秘書程度にしか思っていないタイプだったら、さらに負担感が大きくなります。この状況をどう打破していけばいいのでしょうか?
まず分からないことに対しては、分かったふりをせずに、分からない自分を受け止めることが大事です。全員に「分からない」を伝えて、それぞれに専門性を持っている方と協働すれば問題ありません。
【75.教頭先生へ 強み×弱み】でも書きましたが、自分の弱みは考え方で強みにもできるのです。
でも正直、これだけだと業務は回りますが、楽しく仕事ができるかと言えばちょっと怪しいです。
もうお気づきかもしれませんが、ここまで書いてきた内容は全て受け身です。誰かに与えられた仕事をこなしているだけです。業務を行う手順や方法など、いろいろと試行錯誤することもありますが、基本的にその業務に対する自己決定感は低いです。
仕事がしんどいなと思ったり、それが積み重なってメンタルが崩れてしまう。その最大の原因は、業務に自己決定感が伴っていないからだと思います。
眠育(睡眠に関する教育)を学校現場に取り入れたいと思い、その実現のために教育委員会に行ったという方がいました。教育委員会の激務の中、眠育実現のためにチャレンジしているとお話しされている姿は、本当に楽しそうでした。
私は職員室での働き方を変えたいと思い教頭になったので、教頭業務以外にしたいことがたくさんあります。固定の教頭業務をこなすのが最優先なのですが、それを時短で終わらせた後に生まれた時間を、本来やりたいと思っているチャレンジに注いでいます。

一番心配なのは、校長先生に「教頭試験を受けなさい」と言われて、しぶしぶ受けたら合格してしまったといったタイプの教頭先生です。
教頭になった後に、したいことを見つけられた人は大丈夫だと思います。たとえ一つでも、自己決定感に伴うチャレンジがあれば、他のしんどい仕事も何とかやっていけると思います。
でも教頭業務をこなすだけの人になってしまうと、負担感が積み上がる一方です。
別の年の近畿教頭会で、「楽しく教頭先生やっていますか?」のテーマで3名で交流をしました。100点満点で私は80点くらいだったのですが、その時ご一緒した2人はどちらも20~30点とおっしゃっていました。このお2人は、まだ自分がしたい仕事を見つけられていなかったのかもしれません。
「そもそも業務過多なのに、自分がしたい仕事は言え、さらに業務を増やすのはどうなの?」と思われる方もいるかもしれません。
でも心配はいりません。自分がしたい仕事があれば、それができる時間を確保するために、積極的に時短を進めようという気になります。そして不思議なもので、自分がしたい仕事をしている時は、それ以外で積もり積もったストレスが減っていきます。
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