次年度から教頭になる方にとって、教頭職は未知の世界です。
実際の所、教頭ってどうなんでしょうか?勤務時間は?休日出勤は?どんな仕事が負担で、どんな仕事にやりがいを感じているの?
全国の教頭先生にアンケートに答えてもらい集約されたデータがあります。
こんにちは。BigWaveといいます。公立中学校の現役教頭です。奇妙な生態を持つ教師「教頭」。BigWaveのアジトはそんな「教頭先生」の頭の中を公開する教頭ブログです。

→自治体によって大きな差がある
全国公立学校教頭会が全国の教頭先生を対象に行っている調査があります。令和6年度調査の結果(令和5年度はこちら)をもとに、実際、教頭ってどうなの?を見ていきたいと思います。
回答者は全国の教頭先生21,794名。回答期間は令和6年6月10日から7月19日です。
まず教頭が「1 主に時間と労力を費やしている職務について」のTOP5です。
1.保護者・PTAとの連携…63.9%
2.各種調査依頼等への対応…62.4%
3.児童・生徒指導上の課題への対応…53.8%
4.職場の人間関係(教職員の相談に応えることを含む)…40.5%
5.地域との連携…39.2%
少し驚いたのですが、一番労力を費やしているのは「保護者・PTAとの連携63.9%」でした。学校によると思うのですが、私がこれまでに勤務してきた学校では、教員の中にPTA担当がいて、教頭はその補佐といった位置づけでした。
また、「地域との連携」についても、自治体や学校にもよる部分が大きいです。田舎の学校の教頭先生が、「地域のお祭りには必ず顔を出さないといけない。」と言っていたのを思い出しました。
続いて、「2 副校長・教頭としてやりがいを感じる職務について」では、
1.教職員の育成…84.0%
2.職場の人間関係(教職員の相談に応えることを含む)…64.9%
3.児童・生徒指導上の課題への対応…63.4%
4.保護者・PTAとの連携…54.7%
5・地域との連携…48.1%
やっぱりダントツで「教職員の育成」が1位でした。私もこのTOP3は教頭としてやりがいを感じる内容です。
「3 負担(疲労やストレス)に感じる職務について」です。
1.苦情対応…80.2%
2.各種調査依頼への対応…62.1%
3.職場の人間関係(教職員の相談に応えることを含む)…33.5%
4.保護者・PTAとの連携…31.1%
5.児童・生徒指導上の課題への対応…30.6%
「苦情対応」は「時間と労力を費やしている職務」で9位(27.2%)に入っています。まぁこれは、時間もストレスもかかる業務の筆頭です。
「各種調査依頼への対応」にはいくつかの種類があります。統計を出すための調査は現場に成果が見えにくいので、モチベーションが全く上がりません。教育委員会での勤務経験がある方は、予算を確保するための調査には意味を感じるかもしれませんが、残念ながら私は現場上りなので、モチベーションもいまいちです。
とは言え、時間がかかるものは一部なので、個人的には大きな負担を感じているわけではありません。ただ1つ、別ルートからの同じ内容の調査にはかなり苛立ちを感じます。
「4 副校長・教頭の勤務時間」
約7割の勤務時間が「11時間以上14時間未満」の範囲に入っています。中には「15時間以上」という方も1.8%いるようです。恐ろしい数字です。
奈良の学校のある教頭先生が、朝の開錠と夜の施錠は教頭の役割とおっしゃっていました。その業務を教頭担当としている時点で、12時間勤務は確定です。

「7 副校長・教頭の週休日等の出勤状況」
一番多いのが、「10日未満」37.9%でした。私もここに入ります。しかし「60日~70日」が1.4%、そして「70日以上」も2.4%となっています。
年間の土日と祝日を合わせると120日程度なので、その半分以上で出勤しているということです。正直、どんな業務に時間を注いでいるのか、一度お話を聞かせてもらいたいくらいです。
「4 副校長・教頭の勤務時間」や「7 副校長・教頭の週休日等の出勤状況」については、「教育委員会がどれだけ現場のことを分かっているか」や「どれだけ教職員の働き方改革に取り組んでいるか」と共に、「その自治体の財政面の課題」も大きく影響します。
実際、2年前に朝と夜に警備員が配備されている学校から配備されていない学校に異動になりましたが、勤務時間が増えたと同時に心理的負担をかなり感じました。
校務支援スタッフの配置も教頭の勤務時間に大きく影響します。各種団体から送られてくるチラシをクラスボックスに配架する業務は、じわじわと時間を奪っていきます。
また行政等から届くポスター類も、そんなに掲示する場所が無いよと言うくらい届きます。そのままゴミ箱に突っ込みたくなります。それらを全て担ってくれるスタッフが自治体から配置してもらえるのは、本当にありがたいです。

「15 校務支援システムの導入状況」では校務支援システムをまだ導入していない学校が4.7%もあることが分かります。
昔は指導要録の抄本を作るために、指導要録をコピーして「原本に相違ない」印を押して、さらに校長名印、校印を押して作成していました。校務支援システムが導入されたことで、そういった手作業が大幅に削減されます。まだ校務支援システムが導入されていない自治体には、何が起こっているのでしょうか?
直近で起こっている課題ではICTへの対応があります。今回の調査には無かったのですが、「GIGAスクールサポーターの配置」についても知りたいところです。
GIGAスクールに伴う端末管理やデジタル教科書の導入、AIドリルの普及、ロイロノートなどの授業サポートシステム、校務支援システムなど、ICTに関わる業務が爆発的に増加しています。
文科省や教育委員会は、この爆増した業務を誰が行う想定で考えているのでしょうか。少なくともその窓口は、もちろん教頭先生になります。
以上、今回は少し長めに「教頭って実際どうなの?」を全国調査から見てみました。他にもいろんな調査項目があって、見ているだけで楽しいです。ただ残念なのは、この調査結果は一般の方はほとんど目にしないということです。
まぁ、目にした結果、教頭を目指す人が増えればいいのですが、結果を見てみるとそのような力は全く感じられないので、今はまだ目にしない方がいいのかも。